なぜ館山は新鮮な魚がこんなに安いの?

 

館山と聞いて何を思い浮かべますか?
花、海、鮨、魚…
全部正解です。
今回は新鮮な魚にスポットを当てて、
安くて新鮮なその訳を、もう少し詳しく紹介します。

(2011/12掲載:K)

どこからどこまで? 地魚の定義について考える

まず、館山の自慢といえば新鮮な地魚です。地魚とは読んで字のごとく「地元で獲れた魚」ということなのですが、では「地元」とはどこまでを指すのでしょう? 単純に考えると「館山の地元」というと「館山市」ということになるのでしょうが、それでは範囲が少々狭すぎます。館山周辺の飲食店では鋸南町、南房総市、鴨川市を含む安房地域全域はもちろん、勝浦市あたりのものまで「地魚」として扱うこともあります。ちょっと範囲が広すぎるのでは? と思わなくもないですが、範囲が広いほうがさまざな魚種を楽しめるので、提供する側も食べる側も何かと都合がいいわけです。流通に無理のない範囲であれば「地魚」と言っても全然問題ないのではないでしょうか。
では地域を館山市に絞ってみると、いったいどれくらいの魚種が水揚げされているのでしょう? 次に館山で獲れる魚を季節ごとにざっと挙げてみました。知らない魚もたくさん登場するかもしれませんが、ちょっと我慢して読んでみてください。

ヒラメ、スズキ、ホウボウ、アジ、メダイ、イサキ、カマス、ワラサ、メジナ、キンメ
スズキ、イサキ、イシダイ、メジナ、アジ、イナダ、ワラサ、ブリ、コショウダイ
スズキ、イサキ、アジ、タカベ、キントキ、ソウダガツオ
アジ、ショゴ、ソウダガツオ、コショウダイ

いかがです? もちろんこれだけではなく、実際にはもっともっとたくさんの種類の魚が獲れています。さらに、サザエやアワビなどの貝類、イカ、タコ、イセエビなどを入れるとそれはもう相当な種類に上ります。

館山の魚種の豊富さは、海底の地形にあり!

このように、館山でこんなにたくさんの魚が獲れるのですが、それはいったいなぜでしょうか? それは館山沖の海底の地形によるものとされています。

相模トラフ

館山沖には海の深層から表層へと流れる「湧昇流」があることがわかっています。海の底深くをゆっくりと流れる深層水は表層の流れとはまるで別の動きをしているのですが、微生物が生育できない環境のため、長い時間をかけて沈殿した栄養分が利用されずにそのまま残っています。ご存知のように、館山の沖合いには「日本海流」、別名「黒潮」という暖流が南西から北東へと流れているのですが、ここに下から湧き上がってきた深層水が混ざりあうことで大量のプランクトンが育ち、それを餌とする魚が生育しやすい環境が生み出されているのです。
また、平砂浦の沖合い、伊豆大島との間には、日本海溝から分岐した「相模トラフ」という深さ1000mを超える溝が横たわっていますが、その溝の一部が平砂浦方面へとせり出してきています。こうした複雑な海底の地形も、魚種が豊富であることの理由のひとつになっているようです。

定置網で一網打尽!館山の漁法

館山の魚種の豊富さについて理解いただけたところで、漁法についても少々解説させていただきましょう。他の地域同様、館山も昔に比べると随分魚が減ったともいわれますが、それでもかなりの水揚げがあります。近年では水揚げの大半が「定置網漁」ということですが、これはどういったものなのでしょう?
「定置網漁」は「地引網漁」と並び沿岸漁業の代表的な漁法です。網の形状によりさまざまな種類がありますが、安房地域では一般的に「大謀網(だいぼあみ)」とよばれています。単に「だいぼ」ともよばれるこの網は、簡単にいうと沿岸から沖合に向かって垣根のような網(垣網またはカケダシ)が伸びており、その先に袋状の網がついています。カケダシにぶつかった回遊魚は網に沿って沖へ沖へと誘導され、やがて先端の網に入るという仕組みです。実際の漁では、この袋を少しずつ絞っていって先端部へと追い込み、文字どおり一網打尽にするのですが、こうしてさまざまな魚種を捕獲することができるわけです。現在、館山には7つの定置網がありますが、館山で獲れる地魚のほとんどはこの定置網で獲れたものといえます。
いっぽう、サザエやイセエビなどは刺網漁や見突き漁、潜り漁で獲られています。刺網漁とは、海の中に長い網を垂らしておいて、そこに引っかかった魚を引き上げるというもの。サザエなどの貝類のほか、さまざまな魚が掛かることもあります。
見突き漁とは船の上から箱メガネを覗き込み、ヘシや鋏で実際に見える魚を突く漁法ですが、なにせ7~8mもある棒で、しかもゆらゆらと揺れる船の上から海底の獲物を狙うのですから、かなりの熟練度が要求されます。これは海藻が少なくなる冬に主に行われていますが、今では館山全体でもこの漁を行っているのは数えるほどになってしまっているようです。
潜り漁とは実際に海に潜ってサザエやアワビを獲る漁ですが、比較的水温の高い時期に行われています。かなり深いところへ潜ることもあるので、危険と隣り合わせの漁ともいえます。

館山の魚が安いて旨いワケ

そんな訳で館山周辺には、新鮮な魚介類があふれているのです。これらの魚たちは、それぞれの漁港でいったん水揚げされ、それから競りにかけられるのですが、館山で一番大きな市場が船形漁港です。
船形漁港では、他の漁港で揚がった魚も交えて午前中に競りが行われています。入札の権利をもっているのはおもに仲買い業者などですが、鮨屋などの料理店が直接競りに参加しているケースもあります。入札された魚たちはそのまま各地へと運ばれ、早ければ午後には板場に並ぶことになります。
また、漁協直営の料理店も多く、そういった場所ではどこよりも安く仕入れることができますし、仲買いを通す場合も、必要量だけを買うことができるので無駄なく仕入れることができるといえます。
いずれにしても、漁師、漁協、仲買い、料理店は、古くから信頼関係を築いており、その信頼関係こそが、各店、適正な価格で提供できる秘訣といってもいいでしょう。

炙り海鮮丼はランチの定番になりうるのか?

とまあ、今回は館山をめぐる魚についていろいろと調べてみた訳ですが、どうです? ちょっと食べてみたくなりますよね。館山では「なめろう」「さんが焼き」など、魚を使った郷土料理が有名です。以前「鮨のまち」をテーマに房州鮨の歴史などについて調べてみましたが、今回はこの2月に登場した「館山炙り海鮮丼」について、詳しく紹介したいと思います。
これは、一昨年夏以来の「南総館山発見膳」「八犬伝まんじゅう」に続く第三弾として、「館山市地域ブランド推進協議会」によって作られたものです。今回は市内の5つの店が参加しており、一定のルールに沿った料理を提供するというもの。その内容は概ね次のとおりとなります。

一番上の器

二番目の器

三番目の器

 

1 三段の特製どんぶりで提供
料理は特製三段どんぶりに盛り付け。三段の器とサザエ用五徳はお約束。
2 上から炙り海鮮、刺身、花ちらし寿司
一番上の器は4種の炙り海鮮、二番目は4種の刺身。八犬伝にちなんで「8」という数字にこだわりました。三番目の器は花をイメージした花ちらし寿司。
3 サザエはお約束
炙りの素材にはサザエが必ず入ります。食べやすいように切り身にして提供されます。
4 素材はすべて館山産
この料理のすごいところは、8種の魚介すべてが館山産であるということ。お米ももちろん館山産です。
5 彩を添える季節の花
お重には彩を添えるため季節の切り花も盛られます。目にもおいしい丼です。
6 きわ立つ店の個性
上記ルールの範囲内で内容は各店自由。8種の魚介も季節ごとに変わります。

さっと炙るのがコツ

さて、一番上の器に盛られた「炙り海鮮」ですが、これはお客さん自身がテーブルで炙ります。「お膳提供後5分後を目安に着火する」などの決まりがありますが、食べる順番などは固く考えないでよさそうです。炙る際に注意していただきたいのは、あまり火を通しすぎないこと。素材によっては、先に店側で火を通している場合もありますが、生のものも提供されます。ではここで「炙り」の効果についてご説明いたしましょう。
一般的に刺身は新鮮なほどありがたみが増す傾向にありますが、実際には締めた直後の味は淡白すぎるきらいがあり、「獲れたてはあまりおいしくない!」という人もいるほどです。新鮮な魚特有のコリコリとした歯ごたえは時間とともに失われていく反面、熟成が進むことで旨み成分であるイノシン酸が増加するため、少し時間が経ったほうが舌で感じる旨みは増すのです。日本料理には「湯引き」という技法がありますが、これは魚の臭みを取ると同時に、表面に軽く火を通すことでコリコリ感を残したまま瞬時に旨み成分を引き出すという技なのです。
「炙り」も同じことがいえ、旨みとコリコリの食感を見事に両立させた食べ方といえるでしょう。炙る際には網に置くのではなく、中まで火が通らない程度にさっと炙ってみてください。火の通し加減は難しいところですが、コリコリ感と旨みを両立させた絶妙のタイミングをご自分で探してみるのもなかなか楽しいものです。どうです? ちょっと試してみたくなったでしょう?

もうひとつの例

ここで紹介している「館山炙り海鮮丼」の写真ですが、魚の内容はその日の水揚げによっても変わる場合がありますので参考程度にとどめておいてください。多少内容が変更されるとはいえ、すごいボリュームでしょう? これがなんと1500円なのです! いやいや、これは館山ランチの新定番として、かなり期待できそうです。

ここで食べよう!館山炙り海鮮丼

最後になりましたがこの「炙り海鮮丼」を食べられるお店を紹介しておきましょう。2月1日の提供スタート時点では5店舗のみ。うち4店舗はランチのみの提供になります。くどいようですが、内容は店によって、日によっても変わってきますので毎回新鮮な驚きがありそうですね。わざわざ食べに行ってみたい! そんなランチメニューといえるのではないでしょうか。
「いつ行っても食べられる」というのが基本コンセプトではありますが、お客さんが殺到した場合は早めに品切れになってしまう場合もありそうです。来店前に予約を入れておくのが確実ですね。館山にお越しの際にはぜひ一度、召し上がってみてください!


館山炙り海鮮丼オフィシャルページへ

おしゃれ鮨 海の花
館山市北条2903-101館山駅西口マラガモール1階
電話0470-25-5151
平日 11:15 ~ 15:00(LO.14:30)、17:00 ~ 22:00(LO.21:30)
土日祝 11:00 ~ 22:00(LO.21:30)
定休日 毎週木曜日(祝は営業)

波奈総本店
館山市北条2619-6
電話0470-22-1385
11:00 ~23:00(L.O.22:00)
※「館山炙り海鮮丼」はランチタイム(11:00~14:00)のみ
定休日 第3月休(祝は営業)

休暇村館山
館山市見物725
電話0470-29-0211
11:30~13:30
定休日 なし(年2回臨時休有り)

漁師茶屋 伊戸だいぼ工房
館山市伊戸963-1
電話0470-29-1221
11:00~16:00
定休日 第1・第3水曜日(不定休)

いこいの村たてやま
館山市藤原1495-1
電話0470-28-2211
11:30~14:00
定休日 なし(臨時休有り)

 


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